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スペシャルインタビュー⑤
(スペシャルインタビュー①~③は「胡蝶綺新聞 壱・弐・参」に掲載されてます)
監督:阿部記之 & キャラクターデザイン:中嶋敦子
■改めて、本作の見どころはどこになりますでしょうか。
中嶋さん:やっぱり、信長と信勝の最終決戦ですかね。そこが実質最終回だと思っています(笑)
■決戦は第10話でしたね。史実でも信長が信勝を切ったのでしょうか。
米森P:史実でも信長が風邪を引いたと信勝を呼び出して、そのまま切ったとなっております。
中嶋さん:1回目の裏切りは信長も許したのですが、また2度目の裏切りについて柴田から聞いて信勝を呼び出すと史実にはあるんです。けれど、胡蝶綺では違う方法にしています。ライターさんがどうしても信長に信勝を殺させたくないと言って、恒興に信勝を殺させようとしてたんですよ(笑)監督が修正したんですけど、胡蝶綺の信長って弟を殺せない人なので、ライターさんの気持ちは分かりますね。
阿部監督:やっぱり、兄弟愛があるがゆえに憎しみもあり、(信長が)自分で責任を取らなくてはいけないという事で(信長に信勝を殺させました)。
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■なるほど。阿部監督の思う見どころは?
阿部監督:帰蝶の生きざまですかね。(帰蝶が男で忍者という部分は)かなり脚色されておりますが、男性でありながら女性として信長を愛しているんですが、この時代だからこそいつ迄も一緒にいるわけにはいかないという事で離れる事になるんです。陰から信長を支える帰蝶の心を最終回まで描いておりますし、帰蝶というキャラクターを好きになってもらえればいいなと思っております。
■「胡蝶綺」の帰蝶は最終的に馬場礼次郎として生きていく事になるのですか?
中嶋さん:恐らくそうなると思います。帰蝶は最強ですから(笑)
阿部監督:恒興とは違う方向から信長を支える事になると思います。そういう人達に盛り立てられて、信長という人物は出来ているんですね。
■エンディングムービーに対するこだわりをすごく感じたのですが…
中嶋さん:「胡蝶綺」のストーリーを、見方を変えて作ったエンディングムービーになります。
米森P:最初に帰蝶が血まみれで包丁を握っているのは、夫を殺したからなんでしたっけ?
中嶋さん:そうなんです。信長に輿入れ(いわゆる嫁入り)する前に、別の家に輿入れをしているんですよ。それが最初のカットのイメージです。その後のカットが、信長の家に入った後の家庭の問題(笑)を表現していて、自分の手で信長が信勝を殺してしまうカットがあって、最後にそれを見た帰蝶が信長の元に帰ってくるという流れになっております。
■帰蝶目線のエンディングなんですね。
米森P:だから最後に帰蝶が髪を切るシーンがあるんですよ。
中嶋さん:フルバージョンだったらもっと色々な事が表現出来たのですが、やはり大事な事は信長と信勝の最終決戦になりますのでその部分を重点に置いた構成になっております。フルでもっと色々ねじ込みたかったですね。
米森P:やりすぎると壮絶なネタバレになっちゃいますよ(笑)
中嶋さん:もう十分なネタバレですよ(笑)
米森P:そういえば先行上映会(5月12日開催 第1話先行上映イベント)の際に、帰蝶には秘密があるとしきりに話していたら、お客さんが退場する際に「帰蝶は実は忍者じゃないのか」と話していたそうですよ。良いミスリードが出来ましたね(笑)
■メイン以外で好きなキャラクターはいらっしゃいますか?
中嶋さん:前田利家はいい感じの賑やかしになってくれて、可愛いですよね。あとおはなが、この時代にこんな女性いないだろうという感じではありますが、場を和ませてくれていて(気に入っています)。
米森P:この人なんて事言うんだって部分もありますけど(笑)
■最後に視聴者の方々に一言ずつお願い致します。
中嶋さん:是非見てください。それで、楽しんで頂ければ嬉しいです。見て貰わないと面白さが伝わらないと思いますので、見て欲しいです。
阿部監督:歴史の好きな人もそうでない人もいらっしゃると思いますが、歴史が分からないと面白くないという話にはなっておりません。けれど、歴史の知識があるとより面白くなる部分はあります。(書物で)書かれているのは数行の出来事を脚色で広げる事で現れた、骨太な歴史の面白さを皆様に是非とも見て頂きたいです。
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スペシャルインタビュー④
(スペシャルインタビュー①~③は「胡蝶綺新聞 壱・弐・参」に掲載されてます)
監督:阿部記之 & キャラクターデザイン:中嶋敦子
■帰蝶が「男性」というアイディアはどのように生まれたのでしょうか?
中嶋さん:それは私ですね。帰蝶は結局信長との間に子供を産まないじゃないですか。別の側室の「吉乃」とかが子供を産むわけで。そうなると、帰蝶の立場があまりにも可哀想かなと思い、男だったら子供出来なくても当然なので(笑)そこからの発想で…途中で帰蝶は退場するんですけど、それは結局信長の為に身を引いて。それが女性同士だとちょっと…ていうのが男性だと子供産めないし、世継ぎの為に身を引くというのがしっくりくるので。
■最初は、帰蝶は女性という設定だったのですか?
中嶋さん:最初から男性でした。男性がいいかなと言ったら、意外とすんなり通って(笑)
阿部監督:ある意味でたまたまなのかも知れないけど。この時代(戦国時代)は男性、女性というジェンダーではない愛し合い方というのが割とあって、もちろん女性ファンに向けて多少サービスという面もあるんですが、それを思いっきりそういう風には描きたくない。ただ、そういう時代だということはちゃんと描きたいという部分がありました。あとは、身を引くという部分に関しても、帰蝶の心はあくまで女性なんですが、性は男で産まれて、歴史上は道三の娘として、また刺客として育てられたという色々な要素が、歴史上の事実と相反せず、割といい感じに信長の心の中に入り込めそうな話になったので、結果的にいいバランスで(帰蝶が男という要素が)入っていると思います。
■作っていく途中で当初と大きく変わったキャラクターはいらっしゃいますか?
中嶋さん:信勝ですかね。
阿部監督:信勝は最終的に信長と敵対して死ぬという設定は史実としてあるんです。信長と信勝のこの時代がゆえの争いは史実上は決まっているんですが、実際どういう気持ちでそうなったのかという部分に関しては、(僕たちが)作り出した信長というキャラクターが弟に対してどういう風に接してどう問題が起きてという時に、兄弟として仲良くしていきたいという気持ちに対し、城持ちになった故に力関係のバランスがあってぶつからざるを得なくなり、兄弟愛に強いが故に闇落ちをしてしまうという解釈が一番ドラマチックだなという話になりました。歴史好きの人から見てもあまりにも違和感のあるものにはしたくなかったので、設定考証の方とも調整を行いながら進めていきました。
米森P:「大蛇」の話は実際に「信長公記」の中にあるんですよね。ちゃんと沼地の跡地があって、エッセンスを得ているんです。
■信長と他のキャラクターとの関係性で好きなものは?
中嶋さん:やっぱり信長・恒興ですね。信長はとっても甘い考え方なので、恒興がサポートに入ってフォローしているって感じ。言いたい放題いいながら(笑)その関係性が好きですね。
阿部監督:ドラマとして一番頑張ったところでいうと信長と信勝のところです。封建社会のなかで、揺れ動きながら、でも最後は「兄さん」と言って死ぬというのは熱いドラマになったかなと思ってます。
今回の信長はワンクールで10年ちょっとを描いているので、どうしてもはしょりながら進めることになっちゃって、本当はもうちょっとじっくりやった方がさらに物語として伝わるのかなと思いながらも、見ている方に想像してもらうしかないかなと(笑)スペシャルインタビュー⑤へ続く!
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胡蝶綺新聞【参】(2019年9月発行)
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胡蝶綺新聞【弐】(2019年8月発行)